2020年06月19日

アクロマートのレンズ設計は、約 200年前、当時のTOP研究者
フラウンホーファー、ガウス etc によって始まりました。

コンピューターの無い時代は、三角関数表と紙ペンによる手計算で、
とても時間が掛かりました。

(写真)  自作・8cm 新型アクロマート3号レンズ。

IMGP4284ms

上記、アクロマートレンズの研磨は、手研磨です(200年前と
ほぼ同じ工程) なお3号レンズは、現在ノンコートです。


さて現在・・
旧型アクロマート・レンズは、d線(黄)e線(緑)2色、色消しの設計です。

F線(青)は、80mm F8 前後の中焦点では、理論的エアリーディスク
(レイリー値)からはみ出す設計で、青ハロがかなり目立ちます。
(球面収差補正の中心波長は、d線とe線の中間、560 nm 付近)


新型アクロマートは、80mmF8位で、d線(黄)e線(緑)F線(青)
3色色消しを、ほぼレイリー値の範囲で行う為、青ハロがほぼ判りません。
すっきりとした色バランスとなります。
(球面収差補正の中心波長は、d線とF線の中間、530 nm 付近)

反面、赤ハロ(C線)が目立つようになるので、赤カットフィルターが
欲しいところです。特に近赤外領域では、かなり影響を受けます。



新型アクロマートの設計は、表計算(エクセル)を使用して、
実光線追跡プログラム(2D)を組んで、行いました。

○  実光線追跡プログラム(2D)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi1.5d.htm


設計データは、以下。

80/640mm (F 8.0)  new-achromat construction

r1 =  315mm/9mm/BSL7 (BK7)
r2 = -280mm/0.2mm/AIR
r3 = -280mm/7mm/TIM2 (F2)
r4 = -2100mm/630mm/AIR

球面収差図を出力すると、旧型アクロマート・レンズが、
C線(赤)F線(青)で一致しているのと比較して、かなり違う
事が判ります。

hosi32

星雲星団・彗星等(星野)写真においては、アポクロマートに近い
ナチュラルカラーとなります。

但し、主線である、d線(黄)e線(緑)の領域がやや拡大して、
高級アポクロマートのような、最小星像10μmは厳しいです。
標準・最小星像、20μm 前後。

(x0.35 スーパーレデューサ装着、F 8.0 → F 2.8 レンズへ)

F2.8の明るさのシステムは、現在主流の小サイズCMOS、
電子観測(高速撮像)に適した、新・レンズ光学系です。

30秒で、15~15.5等級が可能 ( 80/ 225mm、SQM-21mag/s2)
動画で、微光天体の観望・観測が出来る、良い時代になりました。

今後も、スモールシステム・望遠鏡 の改良を続ける予定です。


続く・・  (`・ω・´)

☆ 星の便利帳
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bob-k/hosi.htm



(00:15)

この記事へのコメント

1. Posted by シベット5    2020年06月20日 18:04
はじめまして。おそらく日本唯一であろう「レンズ設計・自作」に関する記事、内容についていけないながらも興味深く拝見しております。

さて、ご存知かと思いますが、C線(赤)F線(青)で一致する旧型アクロマートにて、デュアル・ナローバンド・フィルターとの併用で、アポクロマート以上の鋭像を示す可能性が示唆されています。
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/5439358.html
翻って、ご制作中の新型は眼視で大きな威力を発揮すると思われますが、はじめちゃんさんのオリジナル設計でしょうか? それとも「赤色とシアン」のハロが出るこのタイプの踏襲でしょうか↓
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/6628747.html
2. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房5    2020年06月20日 19:54
シベット さま
コメントありがとうございます。


STC Astro Duo NarrowBand Filter”ZWO Duo-Band Filter 比較
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/5439358.html

双方共に、およそ

480-500nm (Hβ、ОⅢ 付近)
650-660nm (Hα 付近)

に透過領域を持つデュアルバンド・フィルターですね。

双方のバンドが合致する設計は、古典的アクロマート
(赤C線~656nm、青F線~486nm、一致型) に近い感じです。


即席で設計してみました。

80/ 640mm (F 8.0) アクロマート

r1 = 404.0mm/10mm/ BK7
r2 = -227.2mm/0.1mm/AIR
r3 = -229.8mm/6mm/ F2
r4 = -884.0mm/637.73mm/AIR

ほとんど、古典的アクロマートですが・・

デュアルバンド・フィルター使用で、3枚玉アポクロマート並みの
球面収差(軸上色収差)補正です。


高精度に研磨された、古典的アクロマートで、イケそうな感じです。
3. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月21日 07:51
問題は、以下の件ですね。

SV165 3cmF4はどのようなアクロマートレンズを使っているか
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/6628747.html


設計してみました。

30/ 120mm (F 4.0) アクロマート

r1 = 72.2mm/6.0mm/ BK7
r2 = -48.8mm/0.0mm/AIR
r3 = -48.8mm/2.0mm/ F2
r4 = -184.5mm/115.98mm/AIR

r2r3 が同率、張り合わせタイプです。
赤C線 656nm、青F線 486nm、約 0.2mm 乖離します。即ち

480-500nm (Hβ、ОⅢ 付近)
650-660nm (Hα 付近)
約 0.2mm 乖離します。

0.2㎜の差は、やや大きいです。
4. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月21日 08:01

上記、3cmF4 アクロマートレンズを評価すると

・青ハロは少なく、概ねシャープ
・青、赤の焦点差がやや大きい 
・Hβ、ОⅢ と、Hα の焦点差がやや大きい
・デュアルバンド・フィルターが使いにくい

・・という感じです。
5. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月21日 08:13
貼り合わせタイプのアクロマートレンズ
青、赤の焦点差が、大きくなりがちです。

分離式アクロマートは、青、赤の焦点差を小さく設計出来ます。
デュアルバンド・フィルターが使いやすいです。

ただ、3~4cmの小口径は、貼り合わせタイプが大半ですね。
6. Posted by シベット   2020年06月21日 08:47
シミュレーションありがとうございます!

赤と青で0.2mmくらい焦点位置が違うということは、F4の場合、例えば赤にピントを合わせると青が0.2mm/4=0.05mmくらいのピンボケ像になるということでしょうか?

SV165を眼視で見た時、目立つ青ハロがなく、非常にシャープなイメージでした。電視観望ではピント位置によって赤ハロや青ハロが発生しますが、すべてシミュレーション結果と一致しますね。桿体細胞には赤の感度がないので、特に星を眼視で見る目的では問題が生じないわけですか。

あと、分離式アクロマートって、面倒くさいことするよな、貼合わせでいいのに、とか思ってたんですが、やはり設計上の必要性があったのですね。
7. Posted by シベット   2020年06月21日 09:02
すいません、ご迷惑ついでに質問です。

青と赤のピント位置が揃わないレンズについては、焦点面の少し前にシングルの凹レンズ(メニスカスが最適?)、もしくは肉厚の平行平面ガラスを置いて、両方の波長のピント位置を近づけることはできそうでしょうか・・・軸上はそれでうまくいったとしても周辺像を悪化させてしまいますか?
8. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月21日 09:58
> 赤にピントを合わせると青が0.2mm/4=0.05mmくらいの
> ピンボケ像になるということでしょうか?

はい、0.05mm、50μm ボケます。かなりのボケです。
貼り合わせタイプのアクロマートは、設計の自由度が少ないです。
球面収差(軸上色収差)だけでなく、コマ収差の補正も厳しいです。


> 青と赤のピント位置が揃わないレンズについて
> シングルの凹レンズ(メニスカスが最適?)

はい、最適化できます。
r -700mm 前後の、ごく弱い凹レンズで、赤青2色がほぼ揃います。
コマも、さほど増えません。

r -700mm は、焦点距離で、約 -1400mm 相当。ほぼ平面です。
市販品で探すのは、難しいかも? 

自作レンズなら、簡単に出来そうですが・・
9. Posted by シベット   2020年06月21日 21:20
たびたび申し訳ありません。

そんなに曲率の大きい凹レンズになってしまうんですね。確かにまず売ってなさそうです。
一番度の弱い近視用のレンズを極力焦点面に近づけてもだめでしょうかね。
10. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月22日 00:24

メガネレンズ(円形)なら手に入りやすいかも・・
凹レンズ、-0.75D

ちなみに、対物レンズの前に置きます。
11. Posted by シベット   2020年06月22日 07:17
失礼いたしました。凹レンズは焦点面の直前に置くのを想定していました。
これだと入手できたできあい凹レンズのパワーを焦点面からの距離によって最適化できるような気がして。また、この位置だと平行平面ガラスでも結果、凹レンズの働きをしますよね? フィルター5枚重ね(これはこれでゴーストなど別の問題も発生しそうですが)とかで最適化できると面白いかなとも思っていました。

メガネレンズを筒先に置く実験は一回自滅しています。
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/1825419.html
(精度の他にもレンズが薄すぎる問題もありました)
筒先に置くと精度が必要になるのですが、焦点面直前だとこれもかなりゆるくていいのではないかと思っていました。
12. Posted by シベット   2020年06月22日 07:23
あ、ちなみに最適化しなくても星像が現在の半分くらいになる負修正(?)でも実用性があると思っています。たとえばこのカメラレンズで、実測55μm→30μmくらい。
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/6284553.html
13. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月22日 19:26
凹レンズを焦点部に置くのは、対物F6クラスだと良好です。

F4クラスだと、球面収差(軸上色収差)がやや大きい感じです。
30mm → 20㎜ に絞れば、ほぼ無問題です(或いは、30mmF6 レンズ)


接眼側・凹レンズ、r -70mm 前後が良好です。(F6クラス)
一般凹レンズも、多くが効果ありです。(精密品は、7000円位)

(備考) シグマ光機
https://www.global-optosigma.com/jp/Catalogs/category/

総合システムを組めば、明るさとシャープネスが両立します。
14. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月22日 19:27
ちなみに・・

自作研磨・4号レンズ(50/ 380mm、F 7.6) 新型アクロマート
総合システム構想は・・

・対物側、凹補正レンズ(r-700mm) → ほぼ平面
・接眼側、凸補正レンズ(Total、135mm、F 2.7) → メチャ明るい!

総レンズ、3群5枚
最小星像、8μm

ナローバンド番長になれるかも?(笑)

deF 3色、8μm(ブロードバンドの方が良いかも?)
15. Posted by シベット   2020年06月22日 20:40
なるほど、既成のレンズにいろいろプラスして補正しても限界があるので、結局はトータルで設計したほうが明るくてシャープな光学系が得られるということですね! しかも、3群5枚、市販のアポクロマートを超えるものができそうです。自作の場合は製作・調整が少し大変そうですが、非常に面白い分野と言えますね。

ありがとうございます。大変勉強になりました!
16. Posted by シベット   2020年06月27日 15:50
焦点面の前に凹レンズを置いてみたのですが、やっぱりダメでした・・・
http://uwakinabokura.livedoor.blog/archives/6749991.html
17. Posted by はじめちゃん@望遠鏡工房   2020年06月27日 19:50
再度、シミュレーションしてみます。

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